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Project / SIDE B 006

  • nonaky2000
  • 2017年10月21日
  • 読了時間: 2分

Photo by Ukyo Koreeda (His FB page)

憧れのタンガニーカ

池上線の車内は午後の倦怠感に包まれていた。それは新一も同じである。取引先に謝罪を入れた帰り道。これから社に戻って、上司に報告しなければならない。朝から胃がずっしりと重く、コーヒー以外を受けつけない。磯釣りに行きたいなあ、と新一は思う。週末の楽しみといえば、会社と自宅の間くらいにある城南島に出かけ、メバルやクロダイを狙うことだった。釣った魚を捌いて、吟醸酒とともにいただくのが滅法楽しい。食卓のかたわらにはノートPCを置き、YouTubeで動物のドキュメンタリーを観る。アフリカ旅行は新一の夢なのである。高校生の頃は、サバンナでゾウやライオンを追うカメラマンに憧れた。釣り道具とカメラを持ってタンガニーカへ旅したら、どんなに楽しいことだろう。疲れきって弛緩した池上線の車内で、新一はコーヒーとタバコの匂いがする溜息をついた。

[Project SIDE B(B面)とは]

写真家は被写体から何かを感じ取り、その対象をそれぞれの視点で切り取ります。

そこには家族や友達への愛が込められているのかもしれないし、哲学的な意味が

あるのかもしれません。あるいは、単なる感覚的な気まぐれや偶然かもしれない。

それらはすべて、写真家が写真に託した本来の意図として、尊重されるべきもの。

レコードでいうA面です。

一方、このプロジェクト B面では、写真がどのような意図でどう撮られたかを

ほとんど無視します。写真を「見る」側の視点で自由に解釈し、妄想し、

勝手なストーリーを付け加えています。一度世に出た写真は、写真家の本来の

意図から離れ、見る人の感覚や感情に委ねられるもの。楽しげな写真を悲しく

見る人もいるし、その逆もあり得ます。プロジェクト B面は、そうした写真の

特性を逆手にとって、見る側が勝手に物語を紡ぎ始めたら一体どうなるのか、

という実験であり遊びなのです。

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