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Project / SIDE B 007

  • nonaky2000
  • 2017年10月22日
  • 読了時間: 2分

Photo by Ukyo Koreeda (His FB page)

100円玉

おばあちゃんが施設に入って、もうすぐ2年。ときどきお見舞いに行くと、おばあちゃんはとても嬉しそうにカステラを切ってくれる。そして「下の売店でジュースでも買ってきなさい」と言いながら、100円玉をひとつくれるのだ。おばあちゃんはいつも小ぶりな机の引き出しから、ちょっと申し訳なさそうに100円玉を取り出す。ときどき50円玉が2枚のこともある。お金が引き出しから出てくるのがおかしくて、前におばあちゃんに聞いてみた。「何でそんなところにしまってるの?」と。そしたら「鍵が掛かるところが他にないからね」だって。どうせ鍵なんて掛けないのに。100円玉が13枚と50円玉が4枚。そのお金でわたしは薔薇の香りのハンドクリームを買って、さっきおばあちゃんにプレゼントした。「高かっただろ?」なんて聞くもんだから、「そうでもないよ」と笑って誤魔化した。

[Project SIDE B(B面)とは]

写真家は被写体から何かを感じ取り、その対象をそれぞれの視点で切り取ります。

そこには家族や友達への愛が込められているのかもしれないし、哲学的な意味が

あるのかもしれません。あるいは、単なる感覚的な気まぐれや偶然かもしれない。

それらはすべて、写真家が写真に託した本来の意図として、尊重されるべきもの。

レコードでいうA面です。

一方、このプロジェクト B面では、写真がどのような意図でどう撮られたかを

ほとんど無視します。写真を「見る」側の視点で自由に解釈し、妄想し、

勝手なストーリーを付け加えています。一度世に出た写真は、写真家の本来の

意図から離れ、見る人の感覚や感情に委ねられるもの。楽しげな写真を悲しく

見る人もいるし、その逆もあり得ます。プロジェクト B面は、そうした写真の

特性を逆手にとって、見る側が勝手に物語を紡ぎ始めたら一体どうなるのか、

という実験であり遊びなのです。

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